November 2010  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

ポートフォリオとプロジェクト学習/書評者:書評者:根岸貴子(さいたま市立高等看護学院教務主任)/ 著者:鈴木敏恵

自ら考え自ら行動する学習者が育つ学習支援の宝庫 (雑誌『看護教育』より)

 

書評者:根岸貴子(さいたま市立高等看護学院教務主任)2010

◆過密カリキュラム下でいかに学生を育てるか 

 平成21年にカリキュラム改正があり,看護実践力をつけるための教育課程が編成され,その理想に向けた教育が始まっている。一年間が経過し運営していく中で,カリキュラムは過密になり,学生にゆとりのない状況となっている。このような状況で,自ら考え自ら行動できる学生を育てることはできるのだろうか,どのような教育法を取り入れればそのような学生が育つのかを模索していた。 

 その問いに答えたのが本書である。これまで「ポートフォリオ=意志ある学び」とは多少なりとも知ってはいたが,実際に教育上どのように運用できるのかは分らないままであった。本書はポートフォリオとは何か,どのように実践するのか,プロジェクトの学習の進め方まで具体的に示している。しかも,授業・実習からスペシャリストを目指す内容まで,活用範囲が広く紹介され,ポートフォリオ学習について初めての方から,実際に導入したい方まで幅広く活用できる構成になっている。著者が看護のめざすところ,看護教育の中で問題になることについて,現状をよく把握されており,読み進めていくと現実に起きていることが手にとるようにわかる。そして胸中の疑問や戸惑いを的確にと言い当ててくれており,共感でき次々と読み進めたくなる本である。そしてこの本の魅力的なところは,現場の問いに対応しながら具体的な例を示し,ポートフォリオ評価とプロジェクト学習を紹介している点である。読者がイメージしながら読めるので非常にわかりやすい。ある程度わかりかけたところへ,実際の取り組みを紹介しているので納得いくものとなる。例えば“情報を見極める力のコーチングの場面”では「どういう見方をしたらいいと思う?」から始まり,その時の姿勢・進め方を紹介している。コーチングということばから実際の行動のイメージ化ができるということは,読者が容易に取り入れやすいものである。 

◆教員自身の「俯瞰」の薦め 

 本書の中で特に惹きつけられたことに「俯瞰」するということがある。自分自身を客観視したり,プロセスを俯瞰し次なる課題を発見したりと,俯瞰することで自己肯定観や自己成長を感じるようになる。自らが気づくという意義は大きい。俯瞰はいろいろな場面で行うことができ,特に教育・看護の中では効果が大きいと考える。 

 看護教育の中で長い間いわれてきた「対象と人間関係を築き,自ら考え行動できる人を育てる」─その教育法の要素がつまっているのがポートフォリオである。著者は看護師を「次世代のロールモデル。未来の人」と言い,その思いをこめて本書を書きあげている。質の高い看護教育・看護師をめざす人に必読の書である。 

(『看護教育』2010年10月号掲載)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<目次>

第I章 新しい教育と理念 
  1 学び続ける人になる 
  2 「意志ある学び」を叶えるプロジェクト学習 
  3 ポートフォリオの基本と理解 

第II章 コンピテンシー教育手法―どう人を伸ばすか 
  1 コンピテンシーを高めるプロジェクト学習の手法 
  2 意欲と実践力がアップするプロジェクト手法による研修 
  3 今,看護師に求められる能力とポートフォリオ・プロジェクト学習 

第III章 実践と応用 
 A.学生として 
  1 自ら学ぶ学生「パーソナルポートフォリオ」 
  2 看護基礎教育を「プロジェクト手法」で行う 
  3 ポートフォリオの「再構築」とその評価 
  4 臨地実習の効果を生む「実習ポートフォリオ」導入手順 
 B.プロフェッショナルをめざして 
  5 採用にポートフォリオを活かす 
  6 オリエンテーションからポートフォリオ開始 
  7 「自立」を実現する新人研修 
  8 臨床研修の意義と課題 
  9 教育担当・プリセプターに役立つ「インパクトシート」 
  10 情報と課題解決力/情報リテラシー/コンピテンシー 
  11 スタッフが活き活き成長する「目標管理」 
  12 気づく力のリスクマネージメント教育 
 C.スペシャリストを目指して 
  13 認定看護 
  14 効果的な「患者指導」 
  15 訪問看護に役立つライフポートフォリオ 
  16 ライフポートフォリオとQOL 
  17 キャリアポートフォリオ 

第IV章 活用シート 
 ゴールシート 
 目標達成シート 
 個人目標リスト 
 アクションシート 
 プロジェクトのフェーズ展開表【身につく力とコーチング例】 
 インパクトシートA【実習用】 
 インパクトシートB【新人用】 
 インパクトシートC【指導者/プリセプター用】 
 インパクトシートD【リスク用】 
 身体シート 
 生活シート 
 成長報告書1/3【価値ある成長と展望】 
 成長報告書2/3【成長エントリー】 
 成長報告書3/3【講義俯瞰】 

索引 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

医学書院

https://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=58228

ポートフォリオとプロジェクト学習/書評者:飯村富子(日赤広島看護大教授・地域看護学)2010/ 著者:鈴木敏恵

 

「与えられた学び」から「意志ある学び」へ

 

書評者:飯村 富子(日赤広島看護大教授・地域看護学)2010

 書名にある「ポートフォリオ」とは,何か? 語義からは,紙挟み,作品集,ファイルを指すが,「意志ある学び―未来教育」の提唱者として知られる著者の鈴木敏恵氏によると「モノであり,同時に考え方や,やり方でもある」という。また,日々成長している「自分を発見」できるもの,それは学びの「基軸」,成長の「記録」であり,何より「自分の意志」で「未来を開くための切り札」という。「与えられた学び」から,「意志ある学び」へと熱く説く著者の理念をひもとく重要なキーワードの一つである。 

 本書は,看護学生や現場の看護師が,他者のために自らの最善を尽くしてケアを提供するための能力開発の手引書であり,学生や看護師自身が人間として成長・向上するための学習方法や学び方の手順・道筋を示した解説書である。本書はまた,教師や現場の指導者にとって,対象者の気付きを促す手順や教育方法を丁寧に示した指導書であり,従来実施してきた授業や現任教育を見直す改善書でもある。 

 本書は,4つの章で構成され,第1・第2章はポートフォリオとプロジェクト学習についてとその教育手法について書かれ,第3章は実践・応用編となっている。最終章は学生やスタッフが実践の場で活用できるシート類を紹介した活動シート集で,出典を明記すれば自由に活用してよいと書かれているのがうれしい。 

 本書を読んで,特に私が深い感銘を受けたのは第3章である。第3章は,多くの実践例をもとに「学生として」,「プロフェッショナルをめざして」,「スペシャリストをめざして」と,看護師としての成長段階に合わせて,どのようにポートフォリオを活用し,学習を積み重ねていったらよいか,具体的に書かれている。 

 さらに,要所・要所に実践者の声が収集され,読者は「なるほど,なるほど」と納得できる。これこそ著者が説く「エビデンスを大切に」を見事に実現した強みにほかなるまい。また,全国の看護教育や現場で,著者が関係者と協働して個々人が所有する情報を掘り起こし,収集し,共有し,関連させ,そこから目的や意味を持つ情報に変容させる原動力として取り組んでこられた成果である。 

 昨年7月の保健師助産師看護師法の改正で,看護師等は免許を受けた後も,臨床研修その他の研修を受け資質の向上を図ることが努力義務となった。また,看護師等の人材確保法では,国や病院開設者の責務も明記された。この動きに対応するものとして,昨年12月に出された厚生労働省の「新人看護職研修ガイドライン」には,新人看護師が獲得した能力や成果を蓄積する研修手帳として,ポートフォリオの有効性が評価されている。 

 本書は全国の看護学生,現場の看護師の方々,看護教育や現任教育関係者にぜひ一読をお勧めしたい1冊である。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<目次>

第I章 新しい教育と理念 
  1 学び続ける人になる 
  2 「意志ある学び」を叶えるプロジェクト学習 
  3 ポートフォリオの基本と理解 

第II章 コンピテンシー教育手法―どう人を伸ばすか 
  1 コンピテンシーを高めるプロジェクト学習の手法 
  2 意欲と実践力がアップするプロジェクト手法による研修 
  3 今,看護師に求められる能力とポートフォリオ・プロジェクト学習 

第III章 実践と応用 
 A.学生として 
  1 自ら学ぶ学生「パーソナルポートフォリオ」 
  2 看護基礎教育を「プロジェクト手法」で行う 
  3 ポートフォリオの「再構築」とその評価 
  4 臨地実習の効果を生む「実習ポートフォリオ」導入手順 
 B.プロフェッショナルをめざして 
  5 採用にポートフォリオを活かす 
  6 オリエンテーションからポートフォリオ開始 
  7 「自立」を実現する新人研修 
  8 臨床研修の意義と課題 
  9 教育担当・プリセプターに役立つ「インパクトシート」 
  10 情報と課題解決力/情報リテラシー/コンピテンシー 
  11 スタッフが活き活き成長する「目標管理」 
  12 気づく力のリスクマネージメント教育 
 C.スペシャリストを目指して 
  13 認定看護 
  14 効果的な「患者指導」 
  15 訪問看護に役立つライフポートフォリオ 
  16 ライフポートフォリオとQOL 
  17 キャリアポートフォリオ 

第IV章 活用シート 
 ゴールシート 
 目標達成シート 
 個人目標リスト 
 アクションシート 
 プロジェクトのフェーズ展開表【身につく力とコーチング例】 
 インパクトシートA【実習用】 
 インパクトシートB【新人用】 
 インパクトシートC【指導者/プリセプター用】 
 インパクトシートD【リスク用】 
 身体シート 
 生活シート 
 成長報告書1/3【価値ある成長と展望】 
 成長報告書2/3【成長エントリー】 
 成長報告書3/3【講義俯瞰】 

索引 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

医学書院

https://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=58228

プロジェクト学習を体験した千葉大学生が “ポートフォリオ”で貢献性のある提案




千葉大学.普遍教育・教育学部 /前期科目(担当講師 鈴木敏恵)学生がプロジェクト学習の成果プレゼンテーションしました

      

       プロジェクト学習を体験した大学生が

      ポートフォリオで社会的貢献性のある提案

 

 

千葉大の学生生たちがプロジェクト学習の成果として大学キャンパスでプレゼンテーション! アイデアあふれる学生たちの提案は、新しい教育や学習手法に関心のある方にとても役に立ちます!

 

 いいレポートの書き方を知りたい、自分を活かす進路や就職を目指したい、いろんな語学や役立つTwitterの活用法、コミュニケーション力アップ、目標を達成する方法を知りたい!ここに役立つ具体的な方法や工夫を現役の千葉大生たちが披露!鈴木敏恵のポートフォリオ講座も。

 

 日時:20101118日(木) 16201800 (無料)

 場所: 千葉大学 西千葉キャンパス「ふれあいの環」学生総合支援センター

 主催:国立大学千葉大学.普遍教育・教育学部 /前期科目(担当講師 鈴木敏恵)

千葉大学 西千葉キャンパス

 

 共催:文部科学省補助事業千葉大学学生支援GP

     「双方向の多様な場づくりによる学生総合支援」

     千葉大学「ふれあいの環」総合支援センター


 内容:

オープン講座1:『大学生がつくる大学生のための

          メディアを活かし成長する方法を提案します!』


オープン講座2:『Twitterを教科に活かし、いい授業ができる!

                                            方法を教えます!』

 

 

参考書籍課題解決力と論理的思考力が身につくプロジェクト学習の基本と手法

著者 鈴木敏恵  出版社:教育出版

http://www.suzuki-toshie.net/bookyoyaku.pdf


広島 大学FD・SD研修「日本赤十字広島看護大学 特別講演会」講演

 

 日本赤十字広島看護大学 特別講演会

日 時: 平成20年11月12日(水)

 場 所: 日本赤十字広島看護大学ソフィアホール
              
講 師: 鈴木敏恵先生 千葉大学教育学部特命教授

テーマ   意志ある学びをかなえる未来教育
           〜プロジェクト学習とポートフォリオ活用〜

 第一部 12時45分〜14時15分
     対象者:学 生、教職員、本学の実習指導担当者

 第二部14時25分〜15時25分
     対象者:FD・SD研修:教員全員、職員(課長職以上全員)

内容
□ ポートフォリオの基本と応用
□ ポートフォリオの作り方、活かし方
□ 夢を実現するプロジェクト手法
□ 目標を自分で決められるセルフコーチング
□ 課題発見力、課題解決力が獲得できる方法



岐阜:文部科学省「確かな学力の育成に係る実践的調査研究」採択事業/第1回 言語活動の充実とコンピテンシー獲得に有効なポートフォリオ・プロジェクト手法による教員研修 実施




    文部科学省「確かな学力の育成に係る実践的調査研究」事業

    言語活動の充実とコンピテンシー獲得に有効な

    プロジェクト手法による『教員研修プログラム』の提案    

.

主催:岐阜市教育委員会ほか岐阜県地区教育長会

共催:シンクタンク未来教育ビジョン http://pbl21.heteml.jp/vision/

 

講師鈴木敏恵(シンクタンク未来教育ビジョン代表/千葉大学教育学部特命教授)

形 式:「講義とワークショップ」

手 法ポートフォリオ活用・プロジェクト学習・対話コーチング

    プロジェクト学習手法のワークショップ題材『健康』

対 象各教科等における言語活動の充実、活用力に関心のある教師

 

参考書籍課題解決力と論理的思考力が身につくプロジェクト学習の基本と手法

著者 鈴木敏恵  出版社:教育出版

http://www.suzuki-toshie.net/bookyoyaku.pdf


1
pagetop