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■ 講演 鈴木敏恵/フィンランド教科書展示
【収録】2011年6月18日収録動画。<鈴木敏恵とフィンランドの若者ユリウスの対話>
【協力】 動画撮影・リライト:藤井基博/編集ほか:金野稔/写真撮影ほか:加藤由美
S) ユリウス君は、プロジェクト学習をフィンランドでやったけいけんはありますか?
Y) あります。中学校3年生のときに、先生がこういうプロジェクトをだしました。ふつうのアルミ缶から、数学的な面と、物理学的な面と、経済的な面を調べて、まとめることでした。正確には、数学のプロジェクトだったのですが、(アルミ缶1つとっても)社会的な内容もあるし、物理学的な内容もあるし、いろいろな分野の(知識を)使えて、おもしいなー、と思いました。
S) インテグレート(統合)して、数学は数学だけ、経済は経済だけではなく。
たとえば、物理でいうと、このアルミ缶の素材とか・・・?
Y) そうです、アルミの化学的な点から、どうしてアルミを使うのか、どうして鉄を使わないのか。どうして、アルミ缶がその形で、どうしてもっと高くないか、どうしてもっと太くないか
S) 円筒形なら数学だし、社会的には流通とか?
Y) そうです。アルミはどこからもらいますか?、アルミのリサイクルはできますか?、どうできますか?、などのことを調べました。
S) それは、論文みたいな形でだすの?
Y) そうです。基礎研究のようにまとめて、先生にだします。
S) 制限があるわけですね。そうすると大事なことは、そのなかに入っていないといけないですよね。量がたくさんあっては、だめということですよね。そして、先生は、それをどう評価するのでしょう?
Y) 評価は、まず、
・書いてあることが、正しいか。
たとえば、数式が誤っていたら、減点になるでしょう。S) わかりやすいということは、ロジカルシンキングというか、話の組み立てが、理解しやすいとか?
Y) そうです。たとえば、はじめは「アルミは、どこからきますか?」そして、「リサイクルの方法」。これが、逆だとおかしいですよね。まず、手に入れて、捨てて、リサイクルするのが順番でしょう。
S) なるほど、おもしろいね。だから、テキストのチェックではなくて、知的に知識や情報を構築する必要がありますよね。そして、それはたんに調べたことではなくて、クラス中がそのテーマでやったとしても、一人ひとりマイテーマはちがうわけですよね。アルミ缶の「何」について?
Y) 研究の結果がどういう形で書かれるか、人によってちがうと思います。
S) 全員違うものね。そして、コンピュータや新聞をみたり、このアルミ缶だけを見て、書けるわけではない。
Y) そうです。インターネットを使ったり、実際のアルミ缶を持ってみたりします。
S) こうやって、見たり、さわったり、たたいたり、リサイクルの印がついているな、とか生活のなかで、とかね。何かを学んだり、何かを追求したり、プロジェクトって、無から有を生みだすようなところがあるわけじゃないそして、正解があるわけじゃない
Y) そうです。プロジェクトというのは、実は、向き不向きがあります。最初は、暗くて、どうしたらいいのかなっと思って、どんどんプロジェクトを進めて、いろいろ情報を集めて、そのすべてを組み合わせて研究とか解決とかその人の(テーマに)なっていくでしょう
S) すごいね。これ1つは、ただのアルミ缶じゃないですか。これ「アルミ缶」だけじゃ、目標にならないよね。どういうのが、具体的に目標なの?
Y) それは、たとえば、さきほどのテーマなら、アルミ缶の経済的な、数学的な、物理学的な場面を研究してまとめなさいということでした。
S) 目標も自分で考えるし、そこまでのプロセスもだんだんと情報や考えたりしながら、明らかになっていく。最後に、まとめるというのも、たんに長い文書をまとめるのではないんでしょ。
Y) この研究のいちばん大切なことは何か。そういうまとめですね。
S) プロジェクト学習は、自分をもっていないとできないじゃないですか。それは、自分の考えをもっていないと、できない。先生のいうことを従順に聞くだけじゃ、なかなか、、えー、どうしたらいいの? このアルミ缶? 先生、わたし、何したらいいの?ってなってしまう。
Y) そうです。先生に教えてもらっているだけではなくて、自分で習う必要があります。習うことは、自分の責任です。先生がただの指導者です。
S) このプロジェクト学習における8枚のアウトカムは、このなかに情報の根拠みたいなことはないの?
Y) 出典のことですね。出典がないと、ふつうは0点になります。
S) 内容がすべてよくても、出典がないと、0点になっちゃうんだ!
Y) 自分で書いた評価なら、出典はなくてもいいのですけれど、科学的な研究だと、出典がないとこれは、どこからとったのか、わからないからやりなおしをしてください。と、ぜったいにいわれます。
S) プロジェクト学習は、ある意味、社会的な学習。だから、科学的であり、社会的であり、いつどこで、それが起きたのか、必ずそれを添えないと、ロジカルシンキングもすべてが、はじまらないし、崩壊してしまう。だから、ユリウス君と話すと、いつも「わたしは、こう思います。なぜならば・・・」と必ず根拠、エビデンスをお話するので、クリティカルシンキングや、メディアリテラシーなど、フィンランドの教育の成果かな、といつも感じています。
||||||||||||||||||||||||||【 関連 情報 】 ||||||||||||||||||||||||||||
■ 講演 鈴木敏恵/フィンランド教科書展示
2012年8月18日 「未来教育プロジェクト2012 講演会」
■ 書籍
『プロジェクト学習の基本と手法―課題解決力と論理的思考力が身につく』(抜粋ページ)184~187P
■ web
フィンランドのユリウスさんと日本の先生たちとの交流 鈴木敏恵
フィンランドのマリッカさんに聞くプロジェクト学習 鈴木敏恵